水戸市長選:ジェンダー問題について

4月9日の前半の統一地方選が終わった。前半の統一地方選で,衝撃だった神奈川県知事選。

現職・黒岩祐治氏が,選挙直前,『週刊文春』に「11年不倫とAVプレイ,卑劣な別れ」と報じられた。これで,黒岩氏は確実に落ちるだろうと思ったが,意外なことに圧勝した。当確発表後,黒岩氏は,「神奈川のプライドを傷つけてしまった。失った信頼を仕事でお返ししていきたい」と弁明した。

問題となった黒岩氏の行動は,知事になる以前のことだが,知事選出馬のためにとった行動である。「清潔な候補」であるために,女性に対して卑劣な仕方で「清算」をし,妻を深く傷つけたのである。

圧勝したとはいえ,この醜聞報道のおかげで,投票率は9知事選で最低の40.35%だった。白票などの無効投票率は,4年前の2.93%の2倍以上,6.91%まではねあがった(下図)。実数で見れば,212,482人が,わざわざ無効な投票をした。

(引用:東京新聞,2023年4月11日)


いかにも,いやらしいおっさん政治家で,まともな人権感覚などない,このような人物が圧勝したとは信じられないが,政治家というのはだいたいそんなものだ,程度の差はあってもこんな醜聞はよくあることだ,黒岩氏は策略に引っかかっただけで,気の毒といえば気の毒,などと,おっさん界隈の男性は投票したのではないか。

それにしても得票率は67.60%と高かった。男性だけでなく,女性もそこそこ投票したのだろう。そこがよくわからない。

黒岩氏は,女性蔑視の上に傲慢,人権感覚のなさが際立っている。女性なら,生理的に無理という人が多かったのではないかと思うが。女性ならずとも,市民感覚をもった男性からしても,黒岩知事はだめだと思う人は多かったはずだ。無効票21万票は,そういう人たちの黒岩知事拒否の表明だったろう。

私が,黒岩氏醜聞記事で気になったのは,ジェンダー視点からの批判,黒岩氏の公共性に向かう姿勢に対する批判がまったくないことである。

たとえば,東京新聞の記事。大川千寿教授(神奈川大学,政治過程論)の次のようなコメントを紹介した(4月11日)。

「有力な対抗勢力がおらず,もともと『選択肢がない』と言われた選挙でスキャンダルが出た。投票しなければと思いつつ,黒岩知事に投票するのを避けた有権者が白票などの無効票という形で意思表示したのでは」
「黒岩知事は対話を重視すると言っているが,有権者との信頼が築けていなければ一方通行になる。出鼻をくじかれる形となったが,信頼をいかに構築していくかが鍵となる」*

大川氏のコメントは,完全に黒岩知事側に立ったコメントである。市民からすれば,そんなことより,21万人もの県民が,わざわざ投票所に足を運んで無効投票した,という選択行動の意味である。そっちの方をもっと深く分析してほしかった。

黒岩知事は,今回の知事選で「県政全般にジェンダーの視点を取り込み,ジェンダー主流化を推進」などという抽象的な公約を掲げた。だが,知事は,家庭で家父長として振る舞い,県庁でも家父長制トップの振る舞いをしている人物である。ジェンダー問題の本質,実施すべき政策の真髄が理解できているとは思えない。

後半の統一地方選が23日に迫っている。水戸市議選の政策リーフレットが何枚か,自宅に投函されている。いずれも,小さなリーフレット紙面で,ジェンダー政策はない。まちづくりや防災などは書き込まれても,ジェンダー政策まで書き込めないということだろうか。ジェンダー政策は,公約の中で優先度が低いということのようだ。だが,記載がなくても文面から,ジェンダー感覚があるかどうかは大体わかる。

ある男性現職予定候補に,ジェンダー政策の記載がないが,それは同じ会派の女性市議に任せているという意味か,と候補のHPからメールで質問したが返事はまだない。別の男性現職議員に,ジェンダー問題へ話題を向けたら,さっと話をかわされた。男性政治家の勉強不足,無関心は深刻なレベルだと感じる。

今回,水戸市では,水戸市長選と市議選が同時に行われる。ジェンダー視点のないおっさん政治家は一掃していきたい。

水戸市長選予定候補の大内くみ子さんは,公約7本柱の一つにきちんと「ジェンダー平等」を書き込んでいる **。




* 「神奈川県知事選で白票など無効票が大幅増 / 過去の不倫発覚の黒岩氏『私に対する批判と受け止める』」,東京新聞,2023年4月11日

** 「明るい水戸市をつくる会   事前ビラ(3,4月号外)」,大内くみ子HP

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