ビキニ水爆被災と浜岡原発

 

今年は,アメリカが南太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁で行った水爆実験の被ばくから70年。2月28日から3日間,静岡市内で開催された「2024年3・1ビキニデー」イベントに初めて参加した(写真1)

写真1 ビキニ水爆被災70年シンポジウム,開会挨拶をする日本原水協事務局長・安井正和さん


28日の「ビキニ水爆被災70年シンポジウム」は,高橋博子さん(奈良大学)の報告で始まった。水爆実験の目的の一つは巨大爆発による被ばくデータを集めることで,マーシャル諸島の住民を犠牲にするものだったが,原子力委員会アイゼンバッドは,「これらの人々がネズミより私たちに似ていることもまた事実である」と述べて,この非人道的実験を合理化した。作成された被ばく文書は抜き取られたという。

野口邦和さん(原水爆禁止世界大会実行委員会運営委員会共同代表)は,日本政府は「米国に対し原爆実験を中止するよう要求するつもりはない,実験は自由諸国の安全保障にとり必要」(岡崎外相,1954年4月)と述べ,アメリカを免罪,賠償請求を放棄したこと,原水爆禁止運動は,核軍拡競争に立ち向かう国民の非核意志を構築,世界的な反核平和運動の出発点になったことを述べた。

29日の「原水協全国集会分科会」第2分科会では,イ・ジュンキュさん(韓国/韓神大学統一平和政策研究院専任研究員)が報告した。北朝鮮は「正面突破,自力更生,核兵器の高度化」を掲げて核対決姿勢を強め,韓国尹政権も韓米日の軍事同盟と核の傘に依存している。イさんは,北朝鮮が,ロシアに急接近し,南北朝鮮は同じ民族ではないとする「二つの国家論」を言い出したことから,朝鮮半島は新たな局面に入ったと見ている。朝鮮半島の非核化,武力衝突回避を最優先課題としなければならないと括った。

シンポと分科会の間に浜岡原発に行った。JR静岡から菊川まで40分。そこからバスを2回乗り継いで,さらに徒歩20分。市の中心地・池新田のホテルで前泊し翌29日の朝,周辺を歩いた。

池新田は,江戸時代の新田開発に始まって,旧浜岡町の中心地となり,さらに御前崎市との合併で市の中心地となった地域である。しかし,池新田は店舗の集積がみられず,閑散としていた。目立ったのが,市役所前を走る県道沿道の大型娯楽施設と飲み屋である。パチンコ店や漫画・カラオケ店は,市の人口規模(2.9万人,2023年)と照らし合わせると広大すぎる駐車場を備えて並び(写真2),フランチャイズの居酒屋や地元のスナックなどの飲み屋も軒を連ねている。市の骨格道路は,原発労働者を主要な客とする店舗が並ぶ道路になっているのである。

写真2 沿道の大型パチンコ店


池新田を出て原発に近づくと,原発開発とともに開発されたと思われる新しい郊外住宅地が広がっている。原子炉立地審査指針は,住民の安全のために原発サイトに近接する住宅地開発を禁止しているが,原発開発では指針の規制など徹底無視なのである。

原発サイトは再稼働に向けた工事で活気に満ちていた。しかし,忘れてはならないのは,この原発は南海トラフ巨大地震の震源域にある原発だということである(写真3)

写真3 浜岡原発の正面入り口


核兵器保有国は,核兵器は保有することで侵略,攻撃を抑止すると主張する。核兵を保有しない日本も,日本国憲法を持ちながら,核保有国とまったく同じ立場に立っている。

「我々は、ロシアに対し、同声明に記載された諸原則に関して、言葉と行動で改めてコミットするよう求める。我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」(「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」,2023年5月19日)

しかし,核保有国ロシアは,ウクライナに侵略戦争を起こし,ウクライナは反撃を続けている。侵略は抑止されなかったし,核による威圧もなされつづけている。

原発推進国は,原発は安全でグリーンだと主張する。しかし,原発を推進するアメリカ,旧ソ連をはじめ日本で,原発過酷事故が引き起こされた。福島第一原発事故は,地域を破壊し,汚染水を太平洋に放出しつづけている。原発は危険そのものであり,原発がもたらす環境汚染はとどまるところを知らない。



日本科学者会議東京支部つうしん 677, 2024.3.10

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