東京都が新築戸建てに太陽光パネル設置を義務化する?
新年3日目朝,東京新聞を広げたら紙面トップの,東京都が2022年度,都内の新築戸建て住宅の屋根に,太陽光発電設備の設置を義務付ける条例制定を目指す,という記事にびっくりした *。
「国も義務化を検討したが,住宅価格上昇を懸念する声が強く,見送られた。都は地球温暖化対策には必要と考え,有識者検討会の議論を踏まえた中間まとめを,4月ごろに公表する 方針だ」
新築戸建て住宅とはほぼ持家住宅のことだ。戸建てを新築し,購入する層の多くは若い世代だ。東京なら特にそうだろう。その東京都で,これから新築する戸建て住宅には太陽光パネル設置を義務化する条例を2022年度にも制定するという。
住宅のゼロエミッション実現に有効な政策だが,それでも,私は記事を読んでこれは悪い冗談かと思った。
若い世代は,雇用不安にさらされ,年収は増えるどころか減少している。余裕をもって持家住宅が取得できる人はそうはいない。それでも子どものため,もうちょっと広い家を,よりよい住環境を,と考えて,狭く住環境最悪,その上家賃は高い借家から脱出しようとする人たちにとって,太陽光発電設備価格100数十万円が住宅価格に上乗せされたら,もう都内で取得は無理だということになる。それなら,あえて東京でなくても,近隣の神奈川,埼玉,千葉,茨城で住宅を探そう,こうして,東京から近郊県への人口の分散がすすんで,東京一極集中を緩和するいい手段になりうる(なるほど〜,それはいい案だ!)。
もちろんそういう条例ではないだろうが,この案をまとめようとしている有識者会議に,住宅問題や住宅政策の専門家はいないのだろうか。
去年7月,政府は,家庭部門における温暖効果ガス排出量66%削減という過大すぎる目標(2013年度に対する2030年度目標)を掲げた。いったいどのような政策によってこれを実現しようとするのか根拠もまったく明確ではなく,私は大変危ぶんでいた。そうしたら,住宅新設着工数がダントツの東京都で太陽光パネル設置義務化案が出てきたのである。
住宅は,高度成長期には景気牽引役,低成長期には景気刺激策としてその役割を担わされてきた。そして,地球環境のこの時代には,市民の住生活と住環境の改善に策を講じることなく,温暖効果ガス66%削減目標を実現するため,東京の住宅需要者に負担だけを押し付ける政策を持ち出してきたのである。この条例案はとても納得がいかない。
* 「戸建てに太陽光 条例へ首都本腰 / 新築住宅業者に設置義務付け案 / 22年度制定目指す」,東京新聞,2022年1月3日
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