NO WAR 2
侵略戦争が起こると,戦争を起こした側の国の女性たち,侵略された側の女性たちは,どのように巻き込まれていくのか,リアルタイムにその現場が私たちのところに届く。
4月17日,ウクライナから,ウクライナの戦地に夫を兵士として送り込んだロシア人の女性が,夫に,戦地でウクライナ人の女性を強姦するよう教唆したという通信内容の調査結果が報道された。筆者は,すぐにこれに関する論考を書いた *。送り込まれたロシア兵は,ロシア軍のウクライナ侵略の片棒担ぎにすぎないが,その片棒担ぎを本物の侵略者にさせようとする,ロシア人妻の愚かさをきびしく非難した。
4月20日,「WarNewsPL」(ツイッターアカウント名,@WarNewsPL1)が,ロシアによるウクライナ侵略戦争を鼓舞するように若い女性たちが歌い踊る動画を投稿した(下図) **。今回はこの動画に関する論考である。
「WarNewsPL」は,「Bieżące informacje dotyczące światowych konfliktów.」と自己紹介している。この自己紹介文の下にある ボタン「 Googleによるポーランド語からの自動翻訳」を押すと,「世界的な紛争に関する最新情報」という表示が出た。
このアカウントの開設時期は,2022年2月となっている。ポーランドから発せられているウクライナ支援の側にたつ情報サイトということだろうか。
歌手2人とバックダンサー9人が踊り歌う,1分15秒の動画である。彼女らは,ウクライナの親ロシア派兵士の娘で構成される「ウクライナシスターズ」だという。
歌手2人は,オフィサーのような黒い服を着ている。モスクワで戦略をたて,戦地のロシア軍の指揮をする男性オフィサーがイメージされる。2人は,指揮官のごとく仁王立ち,直立不動で,自信にあふれた表情で勇ましく歌っている。
バックダンサー9人は,赤十字のついた白いナースキャップ(キャップとは言えない。正しくはなんというのだろう)を被り,白いエプロンを腰に巻いた看護師風である。開襟の白い左右の襟にはロシア国旗が縫い付けられている。ロシア戦傷兵を看護する看護師として,背後からこの侵略戦争を支えているというイメージだ。9人は,「Z」(ロシア軍を鼓舞する)***,や「V」(Victoryだろう)を描きながら,こちらも勇ましく踊っている。
ナイチンゲールは,クリミア戦争で,敵味方関係なく負傷兵の手当てをした近代看護学の創始者だと学んだ。この近代看護の理念からすれば,戦場では,この動画のダンサーのような自国の国旗をつけて活動しないだろうし,自国の戦傷兵だけを看護し,敵国の兵士は看護しないということはないだろう。赤十字社は,抗議をしないといけないのではないだろうか。
後ろの壁ではためいている旗は,デザイン要素が多く複雑で,何が描かれているのかさっぱりわからなかった。誰か日本語訳の歌詞をつけてもらえれば,もっと色々なことがわかって批判,非難ができるのだが。... 今後わかったことがあれば,ここに加筆していこうと思う。
また,これからも戦争と女性という視点で,気づいたことだけでも書いていこうと思う(「NO WAR」のシリーズで)。
* NO WAR,2022年4月18日
** 🇷🇺 UWAGA RAK.,2022年4月20日
*** ついに明かされたロシア軍「Z」の真の意味,Newsweek, 2022年4月20日
「5月9日は,第2次大戦でソ連がナチスドイツに勝利したことを祝う戦勝記念日。『Z』は数字の7を2つ、1つを逆さまにして重ねたもの。つまり、(1945年から数えて)77回目の戦勝記念日を意味し、それがウクライナからドンバス地方を「取り戻す」ウクライナ侵攻の象徴になった」と,記事は書いている。
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