日々の生活と災害時の避難救援を支える生活道路について
統一地方選挙が近い。市民のために働く市長と議員を選ぶ視点を提供しようという意図で書いている論考の2弾目である。
今回は,安全な生活道路である。このテーマは絶対,選挙の争点にはならないし,現職の候補者が自身の実績に上げることもまずない。実績がわからないから,候補者選びの目安にもならないが,日常時はもちろん災害時の避難や救援を考えても,生活者にとっては最重要テーマと位置づけてもいいぐらいのテーマである。
2021年,千葉県八街市の市道で発生した,下校途中の児童の列にトラックが突っ込み,2人が死亡,3人が負傷した事故を思い起こしたい。道路は,幅約7mで,路側帯がない。当然ながら歩行の安全を確保するためのガードレールもないという,とても危険な道路が児童の通学路だった。
元東海村長・村上達也氏は,この事故は行政の不作為が主因,とする投書を朝日新聞に寄せている。
大きなプロジェクトばかりを主要実績に上げる現職の首長候補者は,その施政態度に生活者の視点が欠けているか,その視点が著しく乏しい可能性がある。
2021年夏の東海村長選で,現職・山田修候補(現村長)は道路整備の実績をあげた。国道2本の拡幅と,村の特産品・乾燥芋の材料,サツマイモ畑が広がる農村地域を貫通する県道新設をあげていたが,生活道路の整備はわずか1箇所で,ごく短い区間だった。山田氏は,国道拡幅工事の現場に立ってこれを自身の実績とし,YouTubeにあげた。
国道拡幅は産業道路としての機能向上のためであり,県道新設は村の農村地域の景観と生活環境,営農環境を破壊する政策である。村民のための道路整備ではないことは明らかである。このような政策を実績にしたことだけでも,山田候補は村民のために働く村長とは判定できないとして,村長NOの判定を下せたはずだった。
水戸市議の予定候補として活動している,なかにわ由美子さんのツイートが良かった。活動中,市民から要望を受けて,消えた市道の白線の補修を市に要望,実現したという報告である。
当該の道路も児童の通学路である。片方に歩道があるが,もう片方には路側帯もない(写真)。もし,歩道ではなく,もう片方の路側帯のない草むらに落ちそうな細い部分を歩いていて,車と接触し倒されて負傷したとか,あるいはもっと重大な事故に遭ったら,それは,歩道を歩かなかった歩行者のせいということになるのだろうか。学童の毎日の通学と生活者の日々の利用に,不便と危ない歩行を強いる道路のあり方は,もっと注意深く検討されるべきだろう。
写真 水戸市内の市道(なかにわ由美子氏提供)
自転車利用者にも,不安だらけの道路が多く,その利用に不便も強いる。地方都市では,自動車移動が中心で,近くのコンビニへ買い物に行くも車を利用するぐらいだ。そのような市民には自転車利用者の不安や不便は想像できないだろう。
筆者は,自宅のある郊外から都心をへてまた郊外へ,およそ6kmの経路を自転車で通勤してきた。歩道を徐行する車と街区の角で鉢合わせになって,車に足を踏まれそうになったことがある。県道の車道が怖くて歩道を走る部分では,狭い歩道の真ん中に電信柱が立っていたりする。車体とスレスレの空間を,電信柱を避けつつ自転車を押して通行しなければならない部分もある。ドライバが,私を追いかけてきて,自分の車を傷つけたか,といきなり,怒鳴る場面もあった。
道路はいまや,車の専用空間みたいになったが,まずは歩行者,次に自転車利用者の立場に立ったあり方の見直しが必要である。利用者の視点に立たないとわからないことはいっぱいある。小さくても,生活者,利用者の意見,要望をきちんと受け止める候補者が絶対に必要である。そのような候補者を見つけるポイントは,とても小さそうだが,生活と安全にかかわる重大な課題としての視点をもっているかどうかである。候補者にこの視点を確かめてみることが,一つのポイントになるだろう。
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