動物園の暑さ対策: 原発避難所で健康を保てるか
今日の東京新聞に,いしかわ動物園(石川県能美市)の動物たちが涼しく過ごす設備,工夫に関する記事「動物も涼しく快適に / 屋内外自由 / 送風機を公募 / いしかわ動物園」(8月17 日)が掲載された。
筆者は,書きかけの論文で,原発避難所に指定される体育館は,気密性なし,冷暖房なし,断熱性なしで,温熱コントロールができない。熱環境がとくに厳しい夏と冬は動物園以下だと書いた。ただ,動物園の動物は,どんな配慮がされているのか,その現状は知らなかった。それで,人間の原発避難者は,どれほど動物以下だと言えるのかもわからなかった。
上述の記事に触発され,動物園の動物に対する暑さ対策に関する記事を集めた。ここに集めた5箇所の動物園では,それぞれに細やかな工夫がされている。動物に対する設備投資もされている。なんと,冷房付きの居室をもつ動物がいることも知った。動物たちに対する動物園の愛情を感じた。
動物福祉とは「動物が精神的・肉体的に充分健康で,幸福であり,環境とも調和していること」である。いしかわ動物園の一保友恵さん(企画教育係)は,「体調不良が起きないよう,快適な環境を用意することを普段以上に心がけ,何かあってもすぐにケアできるようにしている」と話している。さて,人間の原発避難所はどうか。
ちなみにだが,実は,動物の暑さ対策の記事はさほど多くない。対策がないのではないことは,下の5つの動物園の対策で十分にわかる。代わりに散見されたのが,動物園に来場した客に対する暑さ対策の記事である。ミストがあるので涼しく過ごせます,といった,来場者が減る夏の来場者対策記事である。
冒頭の東京新聞の記事(17日)の元記事と思われる中日新聞(12日)の記事も,来場者の暑さ対策に主眼を置いた記事だった。東京新聞は,人間から動物に視点を180度変え,「動物も涼しく快適に / 屋内屋外自由に / 送風機を公募」に書き換えたようだ。
次の動物園の動物に対する暑さ対策を知れば,原発避難所がいかに非人道的かがわかる。
いしかわ動物園(石川県能美市)
アルパカ:ミスト付き送風機
レッサーパンダ,アムールトラ:屋外と涼しい屋内展示場や寝室の間を自由に往来できる
アシカ,アザラシ:プールの給水を例年の1.5~2倍に増量。水温上昇を抑える
カピパラ:屋内展示場の扇風機
ユキヒョウなど:屋外展示場の遮光ネット
千葉市動物公園(千葉市若葉区)
ライオン,レッサーパンダ:冷房
アジアゾウ:スプリンクラー
サル,ゴリラ:エサ入りの氷
ブチハイエナ:氷の塊
モルモット:凍らせたペットボトルを置いたアルミ板
ボルネオオランウータン:ミスト
ニシゴリラ:凍った乳酸飲料
ニホンザル:にんじん&フルーツ,さつまいも入りの氷
コツメカワウソ:ドジョウ入りの氷
小動物:凍らせたエサ
のんほい牧場(豊橋総合動植物公園,豊橋市)
ウマ:運動場にミスト
テンジクネズミ:スポットクーラー,扇風機,保冷剤
ヒツジ:年中天然のウールのセーターを着ている状態。暑くなる前の4、5月くらいに毛を刈ります。日よけ,扇風機,散水
那須どうぶつ王国(栃木県那須町,2014年のイベント情報)
カピバラのこども:スイカのプレゼント
アメリカビーバー:スイカ,氷のフルーツ・野菜盛りのプレゼント
コツメカワウソ:氷のプレゼント,お魚氷のプレゼント
広島安佐動物公園(広島市安佐北区安佐町)
レッサーパンダ,カワウソ:冷房
ペンギン:ミスト
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