再稼働問題の視点を再考する(村民の原発再稼働問題に対する意識1)

脱原発とうかい塾会報「浜ぼうふう」86号(2023年秋)



選挙になると,東海村と周辺地域では,東海第二原発再稼働反対を訴えるリベラル・革新系候補と,再稼働問題を語らない保守系候補が争うという,歪んだ構図の選挙が繰り広げられます。後者の保守系候補者たちは,当選して議会の多数派になると,原発再稼働推進の議論を強引に進めています。実に卑劣です。

さて,来年1月の村議会選挙を念頭に,今回から数回,国民,村民は原発をどう見ているのか確認し,問題をみる視点について考えます。

まずは,日本原子力文化財団の調査(2022年)。原発利用賛成17.4%に対して,原発廃止は48.8%。反対が賛成を大きく上回っています。英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省の調査(2021年)は,原発利用賛成49%,反対17%。賛成が反対より圧倒的に多く,日本とは正反対です。

日本で反対が賛成より多いのは,福島第一原発事故の記憶や痛みが薄れたとはいえ,多くの人が事故を教訓として胸に抱いているからでしょう。

では東海村はどうか。実は,村民対象の意識調査はほとんどありません。傾向をつかむ意味でまずは,渋谷敦司さん(茨城大学)の調査結果を見ます(2018年,)。

図 4市村住民の東海第二原発に対する考え


確認しておきたいのですが,図中の5つの長い文章でできた選択肢は良くない例です。原発利用賛成について,「再稼働賛成」などと端的に示さず,「なるべく早く」「した方がよい」という説明を加え,原発反対についても「再稼働は凍結し」「地域で」「白紙から議論」,あるいは「停止したまま」「廃炉準備」など細かい主観的条件や説明をつけています。要素が多く正しく判定できません。

こういう問題があることを踏まえた上で,5つの選択肢を便宜的に次のように2分類しました。①原発利用賛成=「なるべく早く再開した方がよい」+「耐震防潮対策を徹底するまで運転再開すべきではない」+「老朽原子炉に代わり新型炉を建設する」,②原発反対=「再稼働は凍結し地域で白紙から議論すべき」+「運転を停止したまま廃炉に向けて準備」。これで集計し直すと,東海村は原発利用賛成が過半数を占め,周辺3市は,原発反対が過半数となりました(表)


表 4市村住民の再稼働賛否


この表で読み取るべき点は,周辺3市の市民の原発意識は,東海村民とは大きく違うという点です。村民は原子力とのつながりや経済的メリットを重視しますが,3市の市民は違うということです。自分たち村民は自己利益のみにとらわれていないか,原発反対が多数派の周辺市民とどう理解を重ねるか,より客観視して考える必要があります。


* 渋谷敦司「地域社会と原子力に関するアンケート2018」調査結果概要,2019年

0コメント

  • 1000 / 1000