原発再稼働に賛成する川崎敏秀氏への反論2

先に,川崎敏秀氏の主張に対して計画論から反論しておいた。

氏は「完璧な避難計画など作れない」という *。しかし,そもそも,誰も「完璧な避難計画をつくれ」と主張していないし,計画論から言ってそんな計画は存在しない。自分に都合の良い勝手な言葉を作ると足元が掬われる。

計画とは,分析→議論→原案→策定→運用→評価→改定→運用のサイクルで成り立つものだが,原発避難計画はこのサイクルがなく,「でたとこ勝負」になるということを書いた。原発避難計画はとても危険なものだ。


川崎氏が再稼働賛成の根拠として出したのが,発電過程でCO2を出さないという原発のメリット,村の商工業者の利益,原発による税収,原電の安全対策工事である。

しかし,CO2は,建設,廃炉,核ゴミ貯蔵,処分で排出するし,重大事故が起これば比較できないほどの排出量になることに氏は関心を持たない。商工業者の利益は守らなければならないが,村民の不利益はどう考えるのか。原発税収に対しては,これに頼り続けることの問題はよく考えるべきである。原電の安全対策工事で安全対策ができていると言うが,50年近く前の耐震性の低い老朽原発の危険性を考えなければならない。

また,福島第一原発事故の今なお避難しつづけている3万人以上の避難者の苦難,再稼働で核ゴミは増えるがその処分場は未だどこにもないという問題,そして,世界潮流のエネルギー転換にも,氏は無関心である。川崎氏の主張では,到底,再稼働賛成を支持できない。

川崎氏の発言から賛成論者の主張の一端を理解したが,根本的な問題がある。

私たちは,過去を反省し,未来を見つめて現在を選択しなければならない。川崎氏は,どのように,福島第一原発事故を深く反省し教訓を読み取ろうとしているのだろうか。

私たちは,ロシアのウクライナ戦争で,原発が核兵器になるという可能性が現実になると知った。原発は,ミサイル,飛行機,テロによる攻撃に太刀打ちできないのに,そんなものが全国54基もある。東海第二原発が攻撃されれば,東海村,茨城は当然,首都も,東日本も壊滅する。

氏は,これらの深刻な問題にどう答えるのだろう。寒村だった村が豊かになったというだけの歴史認識,村の商工業者の利益を守るという主張で,村の未来,村の子どもたちの未来を語り切れるか。

私は,再稼働賛成論者の歴史認識が著しく狭隘で,ごく一部の利益,ごく一時の利益しか考えていないことに強い懸念を覚えている。



* 「<東海第二原発 再考再稼働>(57)脱炭素と経済発展に必要 / 村内で会社経営・川崎敏秀さん(70)」,東京新聞,2023年8月30日



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