東海村の「揺れる村民」にどう訴えるか


東海村民は原発「再稼働」賛成が多数,対して,周辺3市民(日立市,ひたちなか市,那珂市)は再稼働反対が多数,という2018年の調査結果(渋谷敦司,茨城大学人文科学部)があります。

東海村で,原発賛成が多いのは,原子力と雇用や取引が関係のある人が多いからです。生活を守るために原発が必要だとする立場の人が多いから,この結果はある意味,当然です。

しかし,ちょっと立ち止まって考えてみたい。彼らは原発維持が必要だという立場ですが,原発推進が必要と考えている人だ,というわけではないということです。

仕事のため生活のために原発維持が必要でも,原発推進には不安があるという人はとても多い。原発維持に賛成だが不安があるから再稼働反対,いわば,「どっちも」派です。あるいは,条件によっては賛成できない「条件つき」派もいます。推進派に入ると見られる層には,明確な推進派のほかに,この2つの派があるのです。

明確な原発推進派でも,村の原発をずっと維持させると考える強硬派ばかりではありません。原発は,再生可能エネルギーが普及するまでの当座のエネルギー源,と考える人がいます。再生可能エネルギーに転換したら原発は廃炉に,と明確な方向を描いている人もいます。いわば「条件つき」派です。

これらをまとめると,原発推進派には色々あって,強硬な推進派を一番右端に置けば,強硬派,「条件つき」派,「どっちも」派という並び方になるでしょうか。その左隣に原発反対が並び,これが一番左端になります。

再稼働反対派には「条件つき」派はいません。国の安全審査にしても,避難計画にしても,いずれも再稼働推進のための制度です。これらが失敗した時には再稼働反対,などというあり得ない条件つきで考える人はいないのだから,当然のことです。

要するに,村民の立場,考えは,賛成か反対か,この2つだけと考えるのは正しくないということです。村民の立場,考えには,多彩なバリエーションがあって,このバリエーションの具合を捉えるには,平面的ではなく構造的な捉え方の視点が必要だということです。

ところが,再稼働を目指す村の多数派政治家は,反対派をターゲットにした論理のない,ただ攻撃的なだけの態度をとりつづけています。これはたいへん見苦しいだけでなく,戦略的にも実は正しいとは言えません。なぜなら,上述のように,賛成派の中には,色々な立場,考えの人が多数いるからです。このことを考えても,推進派政治家たちの彼らの主張は,あまりに単純です。


「東海第二原発は新規制基準に合格したのだから,安全になったはずだ。安全になったのだから,全村避難など起こらない。だから,避難計画は枠組みを整えるだけでいい。早くつくろう。原発は国策。政府の方針に従わなければならない。原発とともに村の未来の発展を見つめよう」


国の安全審査への絶対的信頼,法制度の徹底軽視,国への追従。ここには,思想のどんな片鱗も見当たりません。自分の頭で考えた跡もありません。

山田村長も同様です。村長は,この12月に避難計画を策定させると言明しました。来年秋の東海第二原発再稼働を見込んだ発言です。村長は,原発に反対なら,自家発電し,公共空間では供給されている原発でできている電気を使うな,家から出るな,と暴言を吐きました。これが,重大な憲法違反の発言だということが,彼にはわからない。原発再稼働を市民の人権と対置させて憚らない村長なのです。

来年1月,東海村議会選挙があります。「条件つき」派,「どっちも」派はともに推進派寄りですが,村民の多数を占めるこれら「揺れる村民」にどう訴えるかが重要だと思います。原発再稼働を止めようという立場からは,「揺れる村民」にどう訴えるかを検討していただきたいと思います。


以上は,2019年実施の日本共産党東海村委員会のアンケートに寄せられた村民の自由意見分析をもとに書きました。

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