2024年1月,正念場の東海村議会選挙


東海村の2024年は,1月の東海村議会選挙ではじまる。そしてその半年後の秋,原電は東海第二原発の再稼働を予定している。3.11以降,12年間も動かしていなかった老朽原発を現役復帰させ,今後15年は動かそうというのである。危険なかけである。2024年は,東海村民にとって,そして茨城県,首都圏の住民にとって重大な年である。

現在,村議会勢力図は,推進派が7割強である。改選しても頭数では,反対派が過半数を確保することはできないのははっきりしているが,得票数で,反対派が多数派だという結果を得たい。

共産党村議の大名美恵子さんが,選挙に向けて事務所を開設した。事務所を訪問して,次のような話をしてきた。


原電は,防潮堤給水口両側基礎の重大な施工不良が見つかったにもかかわらず,来年秋の工事完了予定を変更しない。発覚した部分の施工不良はきわめて重大な事態だが,原電は,村と村民,周辺自治体と住民に,完了期日までに対応可能な,そんな程度の「不備」だと印象づけている。

原電がこの重大問題を秘匿しつづけているということを告発する決意をした方がいた。その方は,共産党村議の大名美恵子さんに告発した。春まで工事に携わっていた作業員だという。

告発者は,完了時期を守るため夜を徹して行われている過酷な現場で,東海第二原発の安全性向上のために,村民と村を守るために,そして,周辺の数10万人,数100万人の住民の健康と生活を守るために仕事をしてきた,そんな信念をもって働いていた人だったろう。

ところが,施工業者は,防潮堤の給水口両サイドの基礎の施工不良を起こした。重大な事態を原電は隠蔽しつづけた。

告発者は,現場を去り,勇気を出して告発という行為に出られたのだろう。私は,そのように想像している。

大名さんは,事態の重大さを理解し,告発者の決意を受け止めて,県庁での記者会見,さらには国会での質問へとつなげていった。これによって多くの市民が,この事実とその重大さを知った。茨城の地元で,そして首都圏でも「建設中の再稼働工事に重大な欠陥:東海第二原発を廃炉に!!」という声が上がっている。

大名さんは,これまでも欺瞞に満ちた原電の態度を追及してきた。大名さんは言う。「原発推進はごまかしや曖昧、不透明」だと。

私も同感である。私は,東海村,福島県双葉町と大熊町での原発による地域開発の歴史を読み解く作業をしてきた。原子力ムラが,これらの地域でしてきた仕業は,<誤魔化し,嘘,隠蔽>の3つで説明できる。

東海村の場合はこうだ。

70年前,原子力ムラは,原子の核分裂エネルギーを発電に利用することを「原子力の平和利用」と美しく安全そうな言葉で誤魔化した。こうして,国民に明るい未来の夢を描かせた。村民も誤魔化した。村への原研設置が決定すると,法的な根拠などなにもないのに,原子力ムラは,東海村に「原子力センター」を建設するとをつき,明るい未来を夢見させた。

しかし,その真意は,原研隣接地に東海原発を設置することだった。原子力ムラは,本命の原発計画をぎりぎりまで隠蔽した。新聞は隠蔽されていた計画の存在を明かすことができず,村も欺かれて,知らぬまに東海原発設置は既定路線となっていた。反対のしようも何もなかった *。

密かに作成された東海原発の計画書には,「汚れを知らぬ白紙の処女地(東海村)を学問と文化の理想的模範都市」にすると書かれていた。このイデオロギーは,戦前戦中,帝国日本による朝鮮半島などの植民地統治におけるもので,植民地への差別意識と統治手法を東海村に適用しようとするものだった **。

「原子力の平和利用」,「原子力センター建設」,「汚れを知らぬ白紙の処女地を学問と文化の理想的模範都市を設営」は,どれも村民を心地よくさせる。村民に原発設置の企みを誤魔化し,騙すための作り話,お伽話である。

しかし,お伽話は過ぎた過去の話ではない。現在も再生産されている。

吉田充宏村議(新生とうかい,原発推進派)は,'24年村議選を1ヶ月後に控えた今月,東京新聞のインタビューに答えて「東海村は原子力と共存共栄している」と語った ***。

共存共栄とは,「ともに生存し、ともに栄えること。 利害が相反する立場であっても、互いに助け合ってともに栄える場合も含む」。

ここで,福島を思い起こしたい。大熊町と双葉町にまたがった福島第一原発は過酷事故を起こして,住民は自分たちの町を追われた。コミュニティは崩壊され,誇りある歴史と文化はことごとく破壊された。原発との共栄共存はお伽話だったのである。福島第二原発が立地する楢葉町と富岡町では,地元の原発は事故を起こさなかったが,隣の原発立地地域に起こった問題は自分たちの問題と捉え,原子力との共栄共存などないと,これを完全に否定した。

吉田は,福島の2つの立地地域の過酷な現実と選択を知っている。それにもかかわらず,なぜ,東海村だけは共栄共存している,と言えるのか。吉田は,その根拠は何も示さず,原子力からの税収が村を豊かにしているとだけ言う。

お金が入るという心地よい話が出てきたら,それは,村と村民を騙すお伽話だと疑い,どこから出てきた話か,その真意は何か,を問わなければならない。何も考えず,原発再稼働で村は豊かでありつづける,と考えるのは実に愚かである。<誤魔化し,嘘,隠蔽>でできている原発開発の歴史に立ち向かわず,現在の不正,欺瞞に知らないふりをしつづけることも愚かである。

再生可能エネルギーへの転換は,日本でも猛烈なスピードですすんでいる ****。地球温暖化対策は待ったなしである。そんな中で,老朽原発を再稼働させるという選択は,人類の叡智に挑戦しようとする野蛮な行為である。

原発立地地域は,自立した市民の言葉を発する,東海村からそういう毅然とした意思表明をしてほしい。大名さんは,2020年の選挙では3位だった。ここに集まったみなさんには,2024年1月の選挙目標を1位獲得においてほしい。



* 乾 康代「原子力開発黎明期の原子力政策と都市計画:東海村における原子力センターの建設過程分析」,日本建築学会計画系論文集 86(789),2021

** 乾 康代「日本の原発開発における都市計画と思想:『原発植民地』の視座」『日本の科学者』(日本科学者会議),2024年3月号(掲載予定)

*** <東海第2原発 再考再稼働>(60)東海村議編 原子力は必要 まず避難計画を 新政とうかい・吉田充宏さん(63),東京新聞,2023年12月2日

**** 北海道で急増!想像以上の「進撃の再エネ」 /「泊」の位置づけは…<宇野沢編集委員が読み解く>,北海道新聞,2023年11月28日。北海道では,2023年10月の発電量に占める再エネ電源割合は40.8%。過去1年間でも38%。政府目標(2030年度,36〜38%)を7年も前倒しで超えた。


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