地球温暖化と災害の多発化

この数年,日本は巨大自然災害に見舞われてきた。なかでも2018年と2019年に来襲した,西日本豪雨(2018年),九州豪雨(2019年8月),台風15号(同年9月),台風19号(同年10月)は,全国各地で雨量記録を更新する大災害となった。

2018年の豪雨は48時間から72時間という長雨の記録の塗り替えが西日本123地点に及び,2019年の豪雨と台風で12時間雨量記録の更新が東日本の120地点に及んだ *。地球温暖化の異常事態が日本に集中したとも言われる所以である。

筆者が住む茨城県では,2011年の東日本大震災で県内各地が地震と液状化,津波の被害を受けた。支援が薄いため,9年たった現在でも住宅を修理できないまま被災住宅に住み続けている高齢者がいる。そして,2015年と2019年の水害で各地の農村が浸水した(写真=水戸市郊外,2019年10月13日撮影)。

写真 水戸市の台風19号による被害(水戸市飯富町,2019年10月13日撮影)

集落と田んぼが丸ごと浸水した。写真奥に斜面林に沿って立つ住宅が見える。避難が遅れた住民はボートで救出された


被災地は高齢者が多く,住宅は戸建て持家が圧倒的である。高齢者が多い被災地の生活と住宅再建支援の充実が急務になっている。

災害多発のなか,被災者と被災地復興の調査研究体制の充実も重要になっている。筆者が去年3月まで在籍していた茨城大学では,3.11後ただちに災害復興支援調査が実施され,筆者も住宅被害調査を開始した。2015年の関東・東北豪雨災害時には,大学の地球変動適応科学研究機関を中心に災害調査団が組織された。しかし筆者が退職した後,住宅研究者は不在になり,住宅被害調査がされず被災者の生活再建課題が究明できなくなった。

2019年12月,招かれて復興デザイン会議全国大会「危機の中にある都市」に参加した。復興デザイン会議は,阪神淡路大震災・東日本大震災・西日本豪雨などの復興現場で,研究・実践・デザイン活動にかかわる研究者・計画家・設計者が互いの取り組み成果をもとに分野を超えた議論を行うことで,次の復興に向けた知見の体系化と,来るべき災害に備えるためのネットワークである(事務局=東京大学工学部)。公開コンペ,研究実践の表彰,講演などが行われた。こうした分野を横断する災害復興研究体制の多彩な構築が,災害多発の日本で今,どうしても必要である。


* 小池俊雄「気候変動で激甚化する水災害への対応を考える」『科学』Dec.2019,Vol.89,No.12


(「巻頭言」『住宅会議』,2020年2月号,一部加筆)

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