原発「安全対策工事」の名で起こっている東海村の凄まじい開発

2018年11月,運転開始から40年が過ぎた東海第二原発は,運転期間の延長が認可された。原電は,この認可のもとで再稼働に向けた安全対策工事をすすめている。

日本の原発立地地域には,原発の周辺開発規制がない。本来なら,原発周辺は開発規制をして農地や緑地を保全し,住宅地などが近くに開発されないように厳しく規制しなければいけない。しかし,そのような規制はいっさいつくられず,東海村では,高度経済成長期,増大する住宅需要に応じて,原発に隣接する地区での開発が次々とすすめられてきた。それが今日までつづいている。その結果,東海第二原発は住宅地に囲まれるという,日本でも例を見ないきわめて異常な状況が現出した。

その原発周辺の住宅地で,いま,目に余るほどの数と規模で農地転用が一気に進んでいる。つくられているのは工事事務所や社員寮,工事関係者のための駐車場である*。そして,住宅地の中を大量の車が行き来する事態となっている。現在も畑が宅地化され,工事事務所が建設されている。

転用されたこれらの宅地は借地である。駐車場は,いずれ畑に戻すことができるよう,アスファルト舗装ではなく,整地した畑の上に順に透水性シート,砂,砂利を敷くという仮設駐車場である。駐車場の利用は,原電の安全対策工事が完了するまでだからである。工事の完了予定は2022年12月とされる。さらに,開発は,原発周辺だけではない。市街地に近い舟石川でも,樹木を伐採しながら作業員用の宿舎3棟が建設されている。

工事が完了すると,更地の大量の宅地が残される。これらの宅地はどうなるのだろうか。原発サイト周辺の宅地を念頭に考えたい。これを考える上で重要な視点は3点である。

① 畑の所有者の多くは農業後継者がいない高齢者である。

② 新たにつくられた宅地は,いずれも原発サイトに隣接している。

③ これらの宅地を集めるとそれなりの規模に達する。

まず①について考えると,工事完了後,畑に戻されることなく宅地として転売される可能性は小さくない。住宅需要は現在大きく縮小しているから,面的な住宅地開発をしようとする事業者はいないだろう。宅地の立地特性と規模(②,③)から考えると,一つにまとめて放射性廃棄物の処分地に利用するとか,何らか原発関連施設に利用されるのではないかという疑念が出てくる。

課題は次の3点である。

1)工事のために転用された宅地は,どの程度の面積規模に達しているのか,そして住宅地の中にどのように配置しているのか。これは,現状と今後の課題を考えるための基本的課題である。

利用する資料は,一つに,東海第二原発から960m先に住んでいる川崎あつ子さんが,自宅の窓や周辺道路から東海第二原発と周辺を定点観察し,ツイッターで公開している写真である。このほか,住宅地図などを用いる。

2)住民生活にどのような影響をもたらしているか。

今,進行している開発は,地域環境に急激な変化をもたらすもので,地域の住環境に大きな影響をもたらしている。地域住民への影響はあまりに絶大である。ところが,原電は,安全対策工事の具体的な内容を公表していない。原電が示したのは「お知らせ」と題した紙一枚である(図1)


図1 「お知らせ 東海第二原発安全性向上対策のための工事の状況について」,2019年10月(川崎あつ子さん提供)


現在,進行している凄まじい開発を見て,私は,60数年前に始まった東海村の原子力開発を思い起こした。当時の村の開発計画を描いたのは,茨城県でも東海村でもない,原子力産業会議(原産)だった。原産は,村に進出する原研,原電,三菱,住友などの原子力事業者に最大限の便宜を図る計画を描いた **。そして,原産の計画はそのまま実現した。現在の東海村は,原産によって描かれた村の姿そのものなのである。

半世紀前の開発は,全村的な開発だった。村のあり方を書き替える大規模開発だった。現在,原電がすすめている開発は,地域的に集中して起こっている開発である。その規模は半世紀前と比べると確かに局所的ではあるが,地域のあり様を変えてしまう質と量をもつ開発であることに違いはない。地域の住民生活を脅かす原電の傲慢な振る舞いは,半世紀前の原産の傲慢と地続きである。

3)三つ目の課題は,これらの宅地の跡地利用はどのように予想できるか,である。

工事が完了すると,あちこちに広大な更地が残る。所有者は高齢者が多く,農業後継者もいないところも多いと聞くから,畑に戻すことなく売るということになる可能性が高い。そこに何ができるかだ。買い手もなく荒涼たる荒地になるのか,それとも原電が買い取って,何らかの施設に利用することになるのか。

原子力発電の維持はすでに遅れたエネルギー政策である。住環境と自然を壊す開発をしてまで東海第二原発を再稼働させなければならない必要性はどこにもない。地域をどう守るか,地域の将来像をどう描くのか,今,村は岐路に立っていると思う。

本論考は,これから始める調査研究の問題意識をまとめたものである。これから資料を集め分析するので,ご意見,告発,要望などをいただければ幸いです。


* 「東海村の住宅地を守る,都市を守る」 須和間の夕日,2020年2月21日
https://musashi-mutsuko.amebaownd.com/posts/7763815
**「東海村の『原子力センター』建設と原子力ムラ(学習会要旨)」2019年10月21日
https://musashi-mutsuko.amebaownd.com/posts/7159830



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