コロナパンデミックとエネルギー消費

11月,エネルギー資源庁が,2019年のエネルギー需給実績の速報値を公表した。

これによると,最終エネルギー消費は,暖冬の影響で2018年に比べて減少した(図) *。部門別では,企業・事業所他の部門では2.3%減,運輸部門1. 8%減、 家庭1.0%減 と、主要全部門でいずれも減少した。電力消費では,家庭は4.1%減、 企業・事業所他は1.1%減だった。


図 部門別最終エネルギー消費


一方で,温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)は,2019年の全大気中のCO2平均濃度は,2018年から2.6ppm増え,410.5ppmになったと発表した。工業化(1750年)以前の平均的な値とされる278ppmと比べると1.5倍である。こちらは,地球規模の数値だが,温暖化を推し進めるCO2濃度は増加したというのである。

では,コロナパンデミックの1年となった2020年は,エネルギー消費量とCO2平均濃度はどう変化しているのだろうか。

判断の根拠となる数値発表は,いずれも1年後の発表を待たければならないが,今春,コロナパンデミックに対応するため,世界各国が経済活動を大きく抑制したら,「大気汚染が深刻なインドで数10年ぶりにヒマラヤが見えた」 「イタリアのベネチアで緑色に濁っていた運河の水が透明になった」などの朗報が届いた。それらの感動的な写真は私たちを驚かせ,大いに喜ばせた。2020年は,地球レベルでエネルギー消費は減り,環境改善も進むだろうと明るい予想もした。

実際,The Global Carbon Projectは,4月,ピーク時で昨年に比べて17%削減したと見積もり(2020年4月7日) ,国際エネルギー機関(IEA)は,1年間でみると,7%から8%ぐらいの削減になると推計した。この推計に従えば,大気のCO2濃度も減少するはずである。

ところが,日本の2020年のCO2濃度の観測値を見ると,この推計にまったく当てはまっていないのである。日本では,気象庁が,綾理,南鳥島,与那国島の3地点で観測しているが,3地点とも,6月までの各月観測値はいずれも,去年に比べて増加している ***。3月から自粛が始まり,4月,緊急事態宣言が出され,経済活動は大きく縮小した。それにもかかわらず,この期間の日本のCO2濃度観測値は,減るどころか増えたのである。

これに関連して,世界気象機関(WMO)は,新型コロナウイルスの世界的流行によって産業活動が減速しても,地球規模でCO2濃度は上昇し続けると見通している。日本の上記観測データを見ていると,IEAより,WMOの予測の方が正しいのではないかと思える。少なくとも日本の観測値は,WMOを支持している。

ところで,私は,3.11前から10年以上,我が家のエネルギー消費量を記録している。2020年1月,我が家の省エネ削減目標を2019年に対して9%と立てた ***。しかし,春からの予期せぬコロナパンデミックで,自宅自粛生活がつづき,11月現在ですでに,電気6.9%増,ガス20.9%増となった。

私の省エネの小さな努力は,コロナパンデミックでいとも簡単にご破算にされてしまった。ご破算どころか,近年まれにみる急増となろうとしている。多くの家庭でもよく似た傾向ではないだろうか。

もちろん,この急増の理由ははっきりしている。コロナ以前は,学校や職場や公共的施設などでエネルギー消費していたものが,家庭でその相当部分を消費することになったからである。だから,家庭部門と業務部門全体で考えれば,プラスマイナスほぼゼロということなのかもしれない。

パンデミックにおける市民のエネルギー消費行動はどうあるべきなのか,ミクロな個人生活や地域生活のレベルから,マクロな地球環境問題までを貫く,市民の行動指針のようなものを描いてみたいのだが,難しくてアイデアは何も出てこない。今後さらに考えていこうと思っている。


* 資源エネルギー庁,資源エネルギー庁令和元年度(2019年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報),2020年11月18日

*** わが家のエネルギー消費量削減 2020年の目標,須和間の夕日,2020年1月10日






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