奈良高 仮設校舎でまもなく直面する冬の室内環境問題
9月,奈良高校を訪問した。
その昔,近鉄油坂駅が廃止になり,2年生から新しくできた新大宮駅が最寄りの駅になった。佐保川に沿って田園の中を歩いた。遠く正面に若草山,近く左手の平城山山腹の奈良高校を見ながら歩いた。長い道のりの最終,学校を正面におく住宅街の一本道に折れ曲がってすすむとやがてゆるやかな登り坂となり,学校敷地入り口の正門を抜けると急勾配の長い階段がそびえたつ。これを登りきるとようやく,切土された平地に立つ本館と北館,その横に広がる運動場を見ることができる。
それから半世紀。田園に隣接していた駅の周辺は市街化され,平城山裾野の住宅地とくっついていた。市街地に高層建築はないが,若草山はもう望めず,平城山の学校校舎も見えなくなった。奈良盆地北東部を縁取る大小2つの山を望み,目指す学校を見ながら歩いた田園の道は,建物が雑然とつづく街中の道に変わっていた。
私が利用していた校舎は新築だったが,半世紀たってあちこちにひびが走っている。倒壊危険建物に指定されたという。耐震改修がよくここまで引き延ばされたものだと思った。
訪問した日は青丹祭の日で,たいへんな人出だった。いくつかの展示発表やパフォーマンスを見学した。
学校敷地の西と東の端に設置された仮設校舎6棟を見た。西側運動場に4棟,東側運動場に2棟設置されている。問題が大きいのが西側運動場に設置された仮設校舎である。本館と北館の地盤面より建物2階分以上低い低地にある。東西向きに2列に設置され,その間隔も狭い(図1,本文下)。
直射光が入りにくい教室が多い(図2)。住宅では,冬至の日の日照時間は4時間以上というのが目安になっている。学校には日照時間の規定はないが,毎日,終日すごす教室だから日照は確保したい。ところが,崖に迫って設置されている東列の2棟のうち,特に東向きの教室の日照時間はほとんどなさそうである。照明を常時つけないと薄暗く,冬は寒い。
図2 仮設校舎の教室
これを通常の教室と比較すれば,いかに非健康的で,非人間的な環境かがわかるだろう(図3)。
図3 通常の健康的な教室 =南向き窓から直射光と北側窓から天空光が入る
奈良高校生の保護者の方のあるツイートを読んだ。「仮設校舎は暑いそうです。エアコンの電力消費量もかなりあり、契約電力量を超しそうだからエアコン使用を控えるように(あくまで「控える」)と子ども達に注意があったそうです」(9月10日)。1階の教室という。
仮設校舎は,日照条件が悪いだけでなく,断熱性能も相当低いようだ。まもなく奈良盆地に底冷えする冬がくる。断熱性がないから,エアコンで暖房してもエアコンの風下は暖かくても,両側の窓際は温まらない。
この状態が著しいと想像されるのが1階の教室,とくに東側の崖に面した教室である。結露が起こり窓や壁,天井にカビが生えそうだ。換気が欠かせない。
暖房しても寒い箇所が残り,常時換気をすれば(熱交換換気でなければ),せっかくの熱も逃すことになる。エネルギーを使えば使うほどロスも大きくなるという悪循環である。
これからしばらく生徒と教師が利用する施設である。早急に必要な措置をとることが求められる。これは,利用者の健康維持のために必要な措置である。エネルギーを賢く大切に使うという観点からも必要である。
関連記事を貼り付けた(毎日新聞「日照不足 冬は結露 卒業の専門家 仮設に指摘」,2019年9月29日)。
図1 仮設校舎配置図
【#奈良県高校再編 1266】
— 川田ひろし (@kawata_hiroshi) September 29, 2019
奈良高校OGの元教授の先生が、学校保健安全の視点から貴重なご意見。これから厳しい冬の時期を迎え、生徒たちの環境は学習にも大きく影響する。
県教委は耐震放置のツケを生徒たちに押し付けているだけであり、教育長は何の責任すらとっていない現実を県民は受け入れない! pic.twitter.com/U6NSqPvC8P
0コメント