戦争と原発と植民地支配 ロシアのウクライナ侵略から見えてきたもの
11月19日,日本科学者会議 第24回総学研究集会で,テーマ「A 戦争のない平和な時代を拓く」の分科会「国際社会における平和と人権」で都市計画の立場から上記タイトルの報告をした。
筆者は,筆者が住む茨城県水戸市から近い東海村を訪れた時,都市計画が大変おかしいことに気づいた。原発敷地を市街地が取り囲んでいるだけでなく,村民の居住地が各種核施設に取り囲まれている。村民の安全に住む権利が完全に無視されているのである。村の都市計画のおかしさはどこから来るのか,最新の研究成果を反映させつつ報告した。
日本の原発開発が,「原子力の平和利用」の名のもとで始まったことは知られているが,その開発イデオロギーは植民地主義そのもので,開発手法も植民地開発だったことはまったく知られていない。日本は,敗戦によって植民地を失ったが,戦後の原発開発は,戦前の植民地開発をそのまま継承していた。
東海村の開発者・日本原子力産業会議(原産)は,開発計画書に「汚れを知らぬ白紙のままの処女地」に「学問と文化の理想的模範都市を設営する」と高らかに書き込んだのである。成熟に対する無垢,文明に対する未開というわけである。原産の意のままに村を開発するために都市計画行政へも権力介入した。その結果が,冒頭に述べた村の惨状である。おかしいのは都市計画だけでなかった。住民の分断策も取り入れられた。それも今日まで続いている。
ひとたび原発を受容すれば,地域へは政治的,経済的,文化的に支配強化がなされる。国内植民地支配は今日まで続いているというのが筆者の見解である。
木畑洋一氏(国際関係史)によれば,ロシアのウクライナ侵略は,帝国主義的戦争であり,脱植民地化の逆行である。要するに歴史の逆行だという。ロシアによるウクライナの原発の攻撃,占拠は,原発が戦略的に重要施設とみなされ,戦略的優位に立とうとしたと見られる。筆者はこのニュースに驚愕した。
敵国の原発が戦争の戦略的施設になることが現実になったいま,日本の政府自民党がとる軍拡路線は,日本に住む数千万人,またはそれ以上の人々に核の恐怖を広げるものである。原発立地地域から,厳しいロシア非難と自国の軍拡批判の声を高めたいと報告を締めた。
東海第二原発を取り囲む市街地
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