水戸市内で行われた原電「対話型説明会」に参加した
8月31日,水戸市内で行われた原電の対話型説明会に参加した。原電が現在,行っている再稼働対策工事などについて説明し,参加者の質問を受ける催しである。避難計画策定義務のある30km圏14市町村と小美玉市を含む15市町村の住民を対象に開催している。
事前申し込みが必要で,住所氏名,電話番号を示したうえ,会場では身分証明書まで求められた。証明書類は何も持っていないことを告げると,ではいいですと,証明なしで小ホールに誘導された。
ただの説明会なのに,原電は,なぜ,住所氏名,電話番号,身分証明まで求めるのだろう。15市町村の住民であることを確認したいのだろうが,原電の再稼働工事や避難計画は15市町村以外の住民でも,原電の考えを聞きたい人,自分の意見を直接言いたい人,再稼働に不安をもつ人,策定不能の避難計画の問題を考えている人,避難者を受け入れる側に住む人など,いろいろな関心がある。参加者を限定する必要はどこにあるのか。
渡されたアンケート用紙には,氏名住所などを書く欄がある。アンケートの記述者とその内容も記録するのかと,さすが,何も書く気になれなかった。原電スタッフの参加者への対応はとても丁寧だが,参加者一人一人の個人情報から質問内容まで集める念の入れようはとても気味が悪かった。
小ホールで,パワーポイントを用いた原電の再稼働対策工事に関する30分の説明の後,A,Bの2グループに分かれて45分の質疑応答の2部構成だった。割り当てられたBグループの部屋に入ると,参加者7人に対し,原電スタッフ8人。
最初の質問は,核燃料サイクルと核ゴミ処分についての質問だった。松山勇氏(東海・東海第二発電所副所長)が,使用済み核燃料は再処理して有効利用する,などと解説した。それが破綻しているから再稼働などできるのかという質問だが,それについては答えない。つづけて,氏は,核ゴミについては地層処分が決まっていて,NUMOが寿都町と神恵内村で調査を始めた。我々もNUMOを応援したい,と,質問の趣旨とはぜんぜん関係ないことへと回答を持っていった。
私は,原電がNUMOにどんな応援をするのか,と聞いてみた。原電社員がNUMOに出向しているという回答だった。応援とは出向のことだった。
次の質問は,安全対策工事というが実質は再稼働対策工事。国にはどのように説明しているのか。6市村から了解なければ再稼働しないか,という質問である。
これに対して,太田貴之氏(地域共生部長代理)(だったと思う)が,国は,24日,GX実行会議の報告を受けて,(東海第二を含む)7基を来年夏以降に再稼働すると言ったが,来年夏に工事は終わらない,国からは許認可を受け,再稼働に向けた工事を進めている,6市村からは再稼働の了解いただけるようにする,と回答した。
質問者の質問趣旨は,これまで原電は再稼働を明言してこなかった,こうした曖昧な態度は欺瞞的だというものだった。私も,原発をいつ再稼働させるのかと聞こうと思っていたところ,今回,明確に「再稼働に向けた工事を進めている」と説明したのである。びっくりした。
さる24日の岸田首相による,来夏以降の(東海第二を含む)7基再稼働発言を受けて,さすが再稼働はまだ考えていないとは言えなくなったので,再稼働に向けた工事だ,という回答を解禁したのではないか。
再稼働するかどうかわからない,というのが原電のこれまでの公式回答だった。再稼働すると表明すれば,原電は東海村をはじめとする6市村との事前協議に入らないといけなくなると考えられているからだ。原電が「再稼働に向けた工事をしている」と表明したのだから,6市村は,1日も早く原電と協議に入ってほしい。
避難計画の質問もあった。原電側は,自治体の避難計画を一緒につくっていきたいと回答した。一緒につくっていきたいとはどういうことか,聞きたかったが,時間がなく,質問の機会を与えられなかった。
圧力容器の脆弱性についての質問も出た。原電はすでに当初の試験片4片を使い切ってしまっている。そこで,圧力容器から取り出して割った残りの半分を新しい材料と溶接して,それを圧力容器に入れている,原電側は,これは,国にも認めてもらっている,そういう規格がある,と回答した。しかし,この方法については,「東海第二原発地域 科学者・技術者の会」が,溶接部の再生は技術的に不可能だと疑問視している *。
対話型説明会という設定だったが,時間がぜんぜん足りず,形式的なやりとりから対話へ発展する前にお開きになってしまった。参加権はたった1回なので,私はもう参加ができない。水戸市内の会場は,400人弱が入れるホールが用意されたが,参加者は14人だった。原電は,参加したい人が何回でも参加できて,実質的な対話ができるよう工夫する必要があると感じた「対話型説明会」だった。
* 「東海第二老朽化 / 原電の評価法に疑義 / 茨城県チームに質問書 / 科学者・技術者の会」,
東京新聞,2022年6月23日
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