「適正化計画」の名で実施する<平城高校閉校+奈良高校移転>

これまでにわかったことを整理した。


奈良高校耐震化の後回し理由につかわれた「耐震改修促進法」

吉田教育長は,なぜ耐震化が遅れたのかという毎日新聞の取材にこう答えている(毎日新聞,2019年6月17日)。「耐震化率を上げることを意識した。耐震化率は棟ごとに計算するので,小さな棟も大きな棟も同じ。厳しい財政事情を考慮した」。

大きな棟,大規模工事を避け,小さな棟,軽微な工事を優先して耐震化事業を進めてきたという。優先すべきは,生徒と教職員が日常使う施設で,耐震性が劣り耐震化が急がれる施設だが,県教育委員会は,まったく逆の方針でやってきたのである。目的は,耐震化コストを抑えつつ耐震化率をあげるためである。

要するに,生徒と教職員の安全確保より,コストと成績(耐震化率)を優先させるという本末転倒の方針で耐震化事業がすすめられてきた。 県教育委員会は,なぜこんな愚かな耐震化をやってきたのだろうか。

吉田教育長の上述の回答の前提にあるのは,耐震改修促進法である。これは,建築物の倒壊などの被害から国民の生命,身体,財産を保護することを目的とする法律だが,2013年の改正で,耐震改修促進のために耐震診断結果の公表が義務づけられた。

吉田教育長の回答は,これを強く意識したもので,軽微な工事,コストの小さい工事で耐震化率という成績をあげることを目指して耐震化事業をしてきたことを正直に答えたのである。

奈良高校の耐震化は,これによって格技場が耐震化されたが,主要棟の本館,北館,体育館は後回しにされつづけてきた。


ちゃぶ台返しの本当の事情「適正化計画」

しかし,この逆さま方針で事業をしていたのは2014年ごろまでである。 吉田教育長は,軽微な工事,小さな棟から耐震化をしてきたから奈良高校の耐震化が遅れた,などと言い訳しているが,以下に述べる事実を隠すために,耐震改修促進法を暗に持ち出しただけに過ぎない。

2014年度は,奈良高校では,いよいよ主要棟の耐震化について詰めていく段階になっており,奈良高校は,頻繁に県教育委員会と打ち合わせをしていた。体育館の耐震改修工事の工程等を確認し,本館は建て替えを要望する高校側に対し教育委員会は耐震改修を検討しているなど,詰めた議論がなされていた。

一方で,子ども数は減少しつづけている。高校の統廃合を再度実施すれば,校舎の耐震化事業は減らすことができる。合わせて,母数の施設数が減るから耐震化率を向上させることもできる。こうして出てきたのが,「適正化配置」である。適正化配置とはわかりにくい用語だが,要するに高校の統廃合のことである。

2014年,荒井知事は,適正化配置の決定を指示した。翌年の2015年度,改築校の検討事業の予算化がストップさせられ,同年12月16日,2年を予定していた奈良高校体育館の耐震改修工事も中止させられた。その理由が適正化配置である。奈良高校の耐震化工事は以来,4年もの間,ストップさせられたまま今日に至っている。

以上のようなちゃぶ台返しの裏には,2015年 10月,平城高校の耐震化竣工があった。12月,吉田教育長は荒井知事に,平城高校閉校を前提とした適正化計画案を提出した。 2015年秋から冬にかけて,すでに,「適正化計画」のうち<平城高校閉校+奈良高校移転>のアウトラインは整いつつあった。県教育委員会は,奈良高校の耐震化を一気にお得に実現する方策として適正化計画を利用したのである。


高校を選別した「適正化計画」

この適正化計画のきわめて重大な問題は,県教育委員会自身が,統廃合の対象となる高校を選別したことである。県立トップの奈良高校を救済するために,平城高校が選ばれて閉校の対象にされた。

当然ながら,平城高校を閉校する理由はどこにもない。平城高校が奈良高校の耐震化実現のために,閉校を強要させられる理由もない。吉田教育長は,このことについて,正面からきちんと語らないといけない。

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