コロナ危機と原発 

コロナ危機下の原発問題

原発は,どんな災害に来襲されても撤退が絶対に許されない都市施設である。コロナ危機下にあっては,サイト内での感染を防止しなければならないが,定期検査や再稼働対策工事などで一定期間,大量の作業員が集められ,そのために,クラスター発生の危険性が高まっているところが全国にいくつも存在している。住民の間で,コロナ感染の発生と原発の安全維持に対する不安が高じている。

工事や検査が実施されているサイトでは,どのぐらいの作業員が集まっているのだろうか。福井県の場合,高浜原発4,500人 ,美浜原発3,000人 ,大飯原発3,600人 (大飯3号機で夏頃に開始される定期検査作業員1,800人を加算) が作業をしている。

東海村の原電サイトでは,東海原発の廃炉作業と,2022年12月完了を予定している東海第二原発の再稼働対策工事のために,1,700人の工事作業員が集められている。原電職員300人を加えると合計2,000人になる。しかも,これらの工事作業員は,関東を中心に北海道から九州まで全国各地からやってきている。東海村内で,これほど大規模な数の外部からの労働者が出入りしている事業所は他にない。周辺でもないだろう。

原発の立地環境を思い起こしてみよう。多くは農漁村,東海村では田園の住宅地である。人口密度が低く人と人の接触がごく少ない農漁村や住宅地と,大量の作業員が集合し一定の密集状態のもとで作業する原発サイトを比較すれば,感染リスクの大きさの違いはあまりにも明らかである。原発サイトは,地域の中で浮かび上がった,いわば巨大なクラスター発生源の島になっているのである。

もし,この原発サイトから感染者が出たら,現場は閉鎖されなければならない。もし,感染者が出た現場が原発の安全性維持ともかかわる現場なら,閉鎖という方法はとれず難しい対応を迫られるだろう。

ところが,事業者は,住民による工事中止の申し入れに対して,安全優先で工事をしていると言い,申し入れに応えようとしない。自治体は事業者に工事中止を要請すべきだが,茨城県の場合,大井川県知事は,作業員は県外へ出ていないから大きな脅威ではないとして,4月中旬,特定警戒都道府県に指定されても,4月下旬から始まるゴールデンウイークは「最大限の警戒」が必要と言いながらも,原電に工事中止を要請しなかった。一方,関電は,住民による大飯原発3号機の定期検査中止の申し入れを受けて,2,3ヶ月の開始延長を決定した。

原電が工事継続を押し通すのは,再稼働の予定時期を後ろにずらすわけにはいかないからである。大井川県知事が,住民の工事中止申し入れを拒否し,原電の工事続行を容認したのは,再稼働を後押ししたいからだろうと推測される。


避難の困難化

コロナ危機は,人間の開発行為に起因する都市災害だが,被害を被るのは都市に限らない。今回のパンデミックは,人口密度が高く,人と人との接触機会が多い大都市で発生,拡大し,国内外の都市へ,都市周辺へと拡散した。

自然災害が多発する日本でパンデミックが起こると,人口密度も人と人の接触量も少ない地方であっても,都市を避けて立地するリスクの高い都市施設があれば,それが地域における感染拡大の脅威になる。原発がその典型で,先に述べた通りである。

2019年10月,台風19号が,東日本を襲い,各地に大水害をもたらした。地球温暖化にともなう近年の急激な気候変動で,大水害は今後も多発することが予想されている。また,地震列島の日本では,季節も場所も問わず地震が多発している。これを書いている5月10日にも,茨城県北部を震源とする震度3の地震があった。コロナ危機のこの最中,大地震や去年のような大水害が原発立地地域を来襲しないとは限らない。

想像してみよう。コロナ危機下で,もし自然災害が発生してそれが原発事故を誘発し,避難が必要になったときのことを。県や市町村が予定している避難システムそのもの(災害対策本部,避難バス,検査場,避難所など)は確実に,同時多発的なクラスター発生源になるだろう。避難先で,感染者が入院できる病院や療養施設を確保することもきわめて困難である。コロナ危機下での原発災害は,こうした想像もはるかに超えるもっと困難な事態に直面するだろう。


求められる透明な再稼働対策工事の情報

コロナ危機下で,原発の安全確保に関する住民の不安が高まっているが,全国の原発サイトの中でも,東海第二原発は,住宅地に隣接していて,地元に与える不安はとりわけ大きい。それでも,事態と住民の思いを理解しようとしない原電は再稼働対策工事を続行している。

いま,東海第二原発サイトですすめられている再稼働対策工事は,土木工事から建設工事まで多様な工事を含むが,それぞれの工事がどのようなネットワークになっているのかまったく不明である。下の表は,川澄俊雄氏(東海第二原発運転差止訴訟原告団世話人)が作成したものだが *,なにもわからないから,氏が書き込めたのは,「安全対策工事」につづき使用前検査が2020年から開始され,これら二つは2022年11月に完了するだろうということだけである。


表 東海第二原発の再稼働に向けた工事と検査の流れ       


コロナ危機のもとで高まっている地域と住民の安全確保のためには,透明性の高い情報が必要である。しかし,見たところ,立地自治体でさえも大切な情報はほとんど受けていないようだ。住民の不安が昂じるのは当然である。原発事業者は,自治体と住民に適切に情報を開示することが強く求められている。


* 川澄敏雄「『東海第二原発再稼働ヤメロ!』の声をもっと広く!大きく!」,茨城県自治体問題研究所,2020年4月23日.



東海第二原発の再稼働のための工事は直ちに中止を」のネット署名キャンペーン中です。私も署名しました。

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