東海第二原発を闇夜に浮かび上がらせる深夜の再稼働対策工事 その2

東海第二原発を闇夜に浮かび上がらせる深夜の再稼働対策工事」で,原電は連日,深夜の工事(以下,再稼働対策工事)をしていることを指摘した。論考で掲載した写真は,東海第二原発の至近に住む川崎あつ子さんの提供を受けたものだが,地表面から放たれた光が上空に拡散して空を明るく染め,原発サイト手前の防砂林のラインが夜空にくっきり浮かびあがっていた。昼間のような強烈な照度で,広範囲に地表面を照明していることがうかがわれた。撮影した川崎あつ子さんによれば,深夜のこの照明はしばらく以前からあったという(図1)。地表面で何らかの工事をしている。


図1 夜の東海第二原発建屋

(撮影=川崎あつ子氏,撮影時期は不明だが,建屋の横にタワークレーンが設置される前)


一体どんな工事をしているのか。川崎さんが原電共生部に電話をして聞いたところ,地盤改良工事をしているという回答だった。

図2は,原電が「原子力所在地域首長懇談会」に提出した,サイト内の宅地の造成と整備に関する説明図である *。大正時代,国家事業として植林された広大な防砂林の中に原発は立地するが,サイト内の防砂林を伐採して宅地化し,既存宅地部分では既存施設を撤去して防潮堤など新たな施設を建設するという図である。

原電が回答した「地盤改良」は,この図中,(12)と(13)に記載されていた。(12)は「安全系海水配管耐震補強他」,(13)は「南側防潮堤」を建設するとされる工区である。図1の照明がついているのは,この2工区ということだろうか。


図2 サイト内の宅地造成・整備に関する説明図


続けて,図2を読み解いていきたいが,この図からは,どんな設備,施設がどこに建てられるのか,詳細はわからない。原電は詳細を明らかにしていないのである。

ただ,既存宅地と新たな造成地を見比べると見えてくることがある。既存宅地では,工事内容と設置する設備,施設が記載されている。たとえば,(2)「耐震補強・竜巻対策(既設海水ポンプ室),(3)干渉物撤去(北側防潮堤)というように。

ところが,造成地で不明瞭な箇所がある。(8)である。(8)は,この図の中で,唯一まとまりのある新たな造成地で,またもっとも広い造成地である。この造成地の用途は「可搬型設備保管場所他」と書かれている。可搬型設備保管場所とは電源や消防などの車両の駐車場が想定される。これが主要な用途のような書き方だが,これらの設備にこれほどの広大な敷地は不要である。こここそが,特定重大事故等対処施設(以下,特重施設)の建設用地であろう。

特重施設とは,以下のように説明されている **。

意図的な航空機衝突などのテロ攻撃を受け、原子炉が大規模破壊されても遠隔操作で冷却を維持し、放射性物質の大量放出を防ぐための施設。緊急時制御室や予備電源などを備える。原子炉建屋との同時被災を避けるため、100メートル以上離すよう定められている。施設の詳細は秘密事項で、原子力規制委員会の審査も非公開。原発本体施設の詳細設計をまとめた工事計画の認可から5年以内に設置する必要があり、東海第2原発は2023年10月17日が期限。

(8)に立てる特重施設が,果たして原発建屋から100m以上離せられるのかというと,たいへん際どく見える。そもそも,これほどに近接した立地で,重大事故,過酷事故でも機能させられるのか,という疑問が湧きあがる。ともあれ,図2のサイト全体を見渡せば,(8)が,特重施設の用地であることに間違いないだろう。

筆者は,コロナ危機の影響を受けて,再稼働対策工事は相当遅れていると見ている。深夜工事は地盤改良工事,という原電の回答だったが,その他の工事,工区でも深夜工事が開始,続行されるかもしれない。緊急事態宣言が解除されたが,コロナ感染のリスクがなお大きい工事現場であることに変わりはない。よく見ていく必要がある。


* 原電「東海第二発電所の現況について」 2020年2月18日
** 茨城新聞「東海第2 対テロ施設に610億円 原電、規制委に審査申請」 2019年9月25日


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