東海第二原発サイトで強行される深夜工事の問題

徹夜の工事事務所

5月20日(水)夜,原電の再稼働対策工事の事務所に照明が輝く写真が,東海村在住の川崎あつ子さんのツイッターで公開された。筆者は,夜の現場の記録をお願いし,以来,1週間が経過した。

5月28日(木)に発信された写真は,草木も眠る午前3時の撮影である(図)。原発建屋周辺は地表面の照度が落ちて,タワークレーンの航空障害灯が鮮明に浮き上がっている。一方,手前のJV工事事務所はいつもの部屋の窓が輝いている。

図 東海第二原発の再稼働対策工事事務所(撮影=川崎あつ子氏,28日午前3時)


これまで,川崎さんが発信された写真は,遅くても日付が変わる頃までのものだった。朝方も,工事,作業は続行しているのだろうか知りたいと思っていた。そうしたところの写真だった。

原電は,コロナ危機の中,これまで住民団体による東海第二原発の再稼働対策工事中止の申し出を振り切って,工事を強行し,しかも深夜にわたる工事を続行してきた。「コロナ危機と原発」に始まる,筆者の先の4編は,この事態を訴えたものだが,本編は,これまでの9日間の撮影記録(20日(水)〜28日(木))を整理し,原電の深夜工事強行の問題について考える。


工事事務所の9日間の記録

まずは,深夜工事の状況を整理する。工事事務所の照明状況は以下のようになる。

 点灯 = 5/20(水) 22時, 5/21(木) 23時,5/23(土) 0時,5/25(月) 22時,5/28(木) 3時

 消灯 = 5/23(土) 21時

 撮影なし = 5/24(日) ,5/26(火)

深夜作業が確認できたのは,20日(水),21日(木),22日(金),25日(月),27日(水)。さすが土曜の夜は照明がなかった。

工事事務所の深夜作業は,不明の24日(日)と26日(火)を除いて確認できた。結論は,ほぼ連続して深夜作業をしていたと言っていい。徹夜していることも判明した。


地盤改良工事の9日間の記録

では,原発建屋周辺でしているという地盤改良工事はどうだろうか。こちらは,事務所の窓の光のようにはっきりと判断はできないが,原発建屋を照射する反射光の強さから作業している様子か否かを判断した。

 作業している様子=5/20(水) 22時, 5/23(土) 0時,5/23(土) 21時,5/25(月) 22時

 作業していない様子=5/28(木) 3時

 不明=5/21(木) 23時(通過車のテールランプのため判断不能),5/26(火)(撮影なし)

深夜の地盤改良工事は,不明の3日を除き,20日(水),22日(金),23日(土),25日(月),27日(水)でやっていたようである。こちらもほぼ連日である。


深夜工事強行の事情

原電が,連日,昼夜を分かたず工事,作業を強行しているのは,予定が大きく遅れているからである。もちろん,これは推測だが,コロナ危機で鉄鋼をはじめ各種の生産が中止し,輸入にも支障が生じているなどの状況を考え合わせると,当然,遅れは出ているはずである。だから,事務所も作業現場も,深夜も徹夜も分別のない強行態勢を敷いているのである。

コロナ危機によって,多くの産業に自粛,中止が要請されたが,原発については,住民団体などが中止要請してもそれを振り切っている。これに対して,原電は,地元住民に「コロナ対策としては、何班かに分けて密にならない工夫などをこらして各企業さんにはやっていただいております」と説明している。

具体的には,どんな対策を取っているのだろうか。福島第一原発廃炉現場のコロナ対策についての作業員の証言が参考になる *。「万が一感染者が出たときのために,何班かに分かれ時間をずらして出勤したり,待機班を作っている。感染者が出て作業班が全滅して,作業に穴があかないように」。

原電もこのような態勢を取っているのであろう。しかし,接触を少なくするためのこうした時間差班別作業は,作業効率が下がる。深夜工事は,効率の低下と遅れを取り戻すために実施されているのだろう。万が一のための余裕ある人員も確保しておかなくてはならない。そのため,人件費は膨れ上がっているだろう。

なんとしても再稼働までの工程を計画通りすすめるために,JVと現場は,連日の深夜作業だけでなく,徹夜まで強いられている。原電が,これほどの無茶をJVに要求すことができるのも,それを労働者にしわ寄せできるのも,再稼働を推進させたい国と原子力ムラと,地元では,これを容認する茨城県があるからである。


* 東京新聞「ふくしま作業員日誌 49歳男性」,5月27日


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