奈良高校の計画移転について,奈良県教育委員会は本当のことを言うべきだろう
毎日新聞 教育の窓「耐震化放置,生徒にしわ寄せ 再編目前 県立奈良高校」(2019年6月17日)を読んだ。
奈良県教育委員会吉田育弘教育長は,なぜ奈良高校の耐震化が遅れたのかについて,次のように説明した。「耐震化率を上げることを意識した。耐震化率は棟ごとに計算するので,小さな棟も大きな棟も同じ。厳しい財政事情を考慮した」。
記事は,教育長の言い訳を後押しして,県立高校の耐震化率が2007年度末47.4%だったのが,2018年度4月1日,89.9%まで向上したことを伝えている。
吉田教育長の説明をかいつまんで言うと,こういうことだ。厳しい財政条件のもとで,耐震化率という成績を上げなければならない。この厳しい課題に応えるために,小さな棟,軽微な工事を優先し,これで少ない予算で成績を向上させることを目指した。
吉田教育長の回答はここまでである。奈良高校の後回し理由について最後まで答えていない。そこで筆者が,教育長の論理にしたがって,代わりに答えてみた。「それで実は,奈良高校の耐震改修は,お金と時間がかかりすぎて,耐震化率アップに反映させにくいので,後回しにしてきた」。
記事は,このあと「耐震化を怠った」「必要性をわかっていながら放置し,職務怠慢」と言う元県知事候補や元県議の声も取り上げ,問題の本質はここにあるかのようにまとめている。記事タイトルも「耐震化放置」だ。しかし,私の代弁を読み直してほしい。教育長の回答は,耐震改修工事対象の施設に優先順位をつけて実施してきたというもので,放置の意図はない。怠慢でもない。
吉田教育長は,奈良高校の未耐震理由を聞かれて最後まで答えることを避けたのである。筆者は教育長を代弁してみて,隠されている理由に気づいた。だから,正確に言えば,本当のことを答えなかったのである。元県知事候補や元県議の「怠った」「放置」と言う声も,問題を正しく指摘していない。
まずは,耐震改修促進法(1995年)の目的を確認しておきたい。「地震による建築物の倒壊等の被害から国民の生命,身体及び財産を保護するため,建築物の耐震改修促進のための措置を講ずることにより建築物の地震に対する安全性の向上を図り,公共の福祉の確保に資すること」である。奈良県耐震改修促進計画(2016年〜2020年)にも同じことが書かれている。
これらの法と計画にもとづけば,被害の影響が大きい大規模建築物,耐震レベルが低い建築物が優先されなければならない。しかし,県教育委員会は,法と計画の目的とはまったく逆の方針,すなわち,お金と自身の成績向上を目的とした方針を立て実施してきた,ということだ。
県教育委員会が本当に,生徒の生命,身体を危険にさらす方針のもと,耐震化をしてきたというのなら,県教育委員会の施策は,耐震改修促進法の目的を完全に逸脱しているとして厳しく批判されなければならない。
奈良高校は,県教育委員会のこの方針の最大の被害者ということになる。
県教育委員会は,しかし,奈良高校生の生命を危険にさらしつづけながらも,ある計画を練り,それを発表する機会を狙っていた,というのが,筆者がこの論考で言いたいことである。
記事を読み返してみた。奈良高校の校舎は,2001〜2007年の耐震診断で震度6程度の地震で倒壊または崩壊する可能性が高いと判定されていた。保護者らは建て替えを含めた要望書を提出していたが,耐震化工事は手つかずだった,と書いている。
県教育委員会は,20年近くも前から,奈良高校の耐震改修は大規模な工事になることを知っていたのである。放置などしていない。厳しい財政のなかで,大規模工事を避ける方策を練ってきたのである。
子ども数の減少が進行している。いずれ高校の削減という局面がくる。合わせて,高校校舎の耐震化促進という課題にも応えなければならない。県教育委員会は,この2つの問題をともに解決する方法はないか,と計画を練ってきた。
出来上がった計画が,耐震性に問題のない平城高校を強制閉校して,奈良高校をそこへ全校計画移転させるという計画である。2018年に発表された県立高等学校適正化実施計画の本当の狙いはここにある。
5月28日の論考で,この計画は仕組まれていた,と述べておいた。その論拠を示したつもりだが,筆者の妄想だろうか。
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